世界の住宅市場は、長年にわたり着実に伸びた後、反落しつつある。今週のグラフが示すように、経済協力開発機構(OECD)の最近のデータによれば、全体の3分の2の国でインフレ調整後の住宅価格が下落している。
こうした動向は、中央銀行がインフレを抑制しようとする中で、住宅市場が金利上昇にいかに適応しつつあるかを明確に示すものである。主要国では政策金利が平均で4%ポイント上昇し、世界金融危機以前の水準に達している。
例えば米国では、連邦準備制度理事会(FRB)が1年前にはほぼゼロであった金利誘導目標を4.5~4.75%のレンジに引き上げたが、これは過去20年で最速の利上げである。その結果、30年物住宅ローン固定金利の平均が急上昇し、昨年末に7.1%と20年ぶりの高水準に達した。
金利は、需要側である所得と人口の伸びや、建築コスト・規制等の様々な供給要因とともに、住宅価格を決定する上で重要な役割を果たす。実質金利が1%ポイント上昇するごとに住宅価格の上昇率が約2%ポイント減速する、というのが国際的なエビデンスに基づく経験則である。
最近の引き締めサイクルに入る前は、金利は低下傾向にあった。金利の低下は、住宅の購入資金に充てたり既存住宅を増築したりするための借入コストを引き下げることにより、当然の帰結として住宅需要の増加をもたらした。現在では、そのプロセスが逆転している。住宅ローン金利が1%ポイント上昇するたびに、米国の平均的な住宅購入者の場合、毎月の利払い額が100ドル増加する。変動金利ローンが大半を占めている国では、住宅購入者に対する影響がより深刻となり得る。
住宅価格の下落がどのくらい続くかは、中央銀行の利上げによってインフレ圧力が抑制されたかどうかに左右されることになる。IMFの最新の「世界経済見通し(WEO)改訂版」では、約85%の国で今年のインフレ率が2022年よりも低くなると予想されている。利上げがすでに供給ボトルネックの緩和に対して効果を発揮していることを受けて、世界のインフレ率は昨年のほぼ9%から今年は約6.5%に低下すると見られている。
中央銀行が利上げを減速したり停止したりすれば、住宅価格の安定性は高まるはずである。